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    Categories: 保育所経営

保育士の給与は低い?安い給料は上がるのか?→引き上げされない仕組みがある!

 保育士の給与は本当に低いでしょうか?

複数の児童福祉施設の経理を十数年やっている自分が、この問題について言及します。

この業界、利権の巣窟ですからね。税金事業っていうのはほとんど利権が絡んできます。

全国的に保育士不足と言われる中、なぜ、保育士の処遇は改善されないのか。いや、そもそも改善とはどういうことなのかを話します。国の制度が仮によくなったとしても、経営者が人件費に予算を割かなければ同じことです。制度ではなく、経営理念で保育士の給与は決まってきます。この問題を制度の問題にすり替えようとするのは大体経営者側の人たちです。ちょっと長文ですが読んでいただけると、保育業界の給料の仕組みが理解できるかと思います。

保育所は税金事業である

最初に夢が無いことをいっぱい書きます。最後の方にちゃんと夢があることを書きますので、是非最後まで閲覧ください。

 

 保育所の運営は皆様の税金で成り立っています。

税金で成り立っている事業というのは、簡単にいうと、

 

 経営努力してもしなくても、もらえる運営費はほぼ一緒

 

ということなのです。

 

 保育所経営の努力といったら、今は保育の質うんぬんではありません。

園児の確保、保育士の確保、これらを100%満たしていれば、それ以上の努力はやってもやらなくても、もらえる運営費の額は一緒ということです。

もちろん枠外入所といって、受け入れ児童数が定員の101%以上119%以下まではペナルティなしで、枠外入所した児童分の運営費がもらえます。

 

守るべき保育の質とはただ1点のみ

絶対に守らなければいけないことは、

 

 保育所で死亡事故を起こさない

ことです。

 

 そのためには、職員研修しなくてはいけません。

 

これら以上の努力は必要なのかというと、よっぽど老舗の保育所、もしくは保育理念、保育の質の探求など、しっかりしたものがないと行われません。

 

保育士の給料についての間違った解釈

 また、保育士の給料について言及した他のサイトを見ると、大体書いてある内容は、こんな感じです。

・保育士の仕事は激務

・保育士は国家資格

・保育士の平均年収は330万程度

・給与の手取りが12万程度

 

こんなところでしょうが、中身は全然違います。

 

まず、

・保育士の仕事は激務でしょうか?

→一般のサラリーマン、残業月平均80時間くらいの仕事に比べれば、まったくもって激務ではありません。

 よく、保育士で残業が多い、持ち帰りの仕事が多いと言う方いますが、それって業務命令の仕事でしょうか?

 ほとんどが、自分の達成感を満たすための、いわゆる「こだわり」ではないですか?

 作成物なんかは、特に保育士はこだわる傾向にあります。時間内で終わらせるというより、時間をかけていいものを作ろうとします。

 結果、業務命令でやるべきことを後回しにするか、持ち帰るか、居残ってこだわりを達成しているかです。

 つまり、やり甲斐があるかは別として、やるべきことだけやれば、定時+30分程度で終わる仕事です。

 親対応も、工夫次第でいくらでも時間内で済ませられるのに、時間外で面談を組んだりします。

 保育士の仕事はこだわらなければ残業なんてほとんどない仕事なのです。

 実際に、企業立の保育園では残業を認めないところが多いです。

 

・保育士は国家資格

→確かに国家資格ですが、だからといって給料が高いとは結びつきません。

 最短で2年短期大学等に通えば、卒業とともにもらえる資格です。高度な試験があるわけではありません。

 実務経験があれば筆記試験でも取れる資格です。こちらは試験内容の約90%は保育士の実務には関係の無いことを勉強し、

 国家試験上がりの保育士は最初、かなり子どもの対応に苦労します。保育士なのに手遊びもできない、なんて感じのスタートです。

 

・保育士の平均年収は330万程度

→これが一番馬鹿馬鹿しい基準です。これ一つだけとって、「保育士は給与が低い」なんて言い続ける方がいます。

 そもそも保育士の平均勤続年数は7年前後です。なので、平均年収もおおよそ28歳程度の平均年収が330万程度といっているわけです。

 40歳、50歳になっても330万程度というわけではありません。

 保育士というのは、他業種に比べると、明らかに継続性に乏しい業種なのです。

 事実、賃金構造基本統計調査でみても、その世代の給与を比較すると、決して低い職種ではないです。

 

・給与の手取りが12万程度

→まず、月の手取りで給与比較しているようじゃ、素人丸出しの意見ですね。

 新卒の職員に多いのですが、「手取りが少ない」とよく言ってます。

 まだ、賞与というものがわからないからですね。賞与4.1か月といってもなんのことだかわかっていません。

 そして、1年目は夏の賞与が無いか、あっても4月から勤務なので少ないはずです。

 大事なのは、2年目の年収です。これがどのくらいかで、その施設の給与基準がわかります。

 ちなみに、月の手取りが多めでも、賞与が無いか数万しかもらえないような施設もありますので、

 年収ベースで計算しないと、ブラック保育園に捕まってしまいますので注意してください。

 

以上が、大体の保育士についてなのですが、自分の考えでは、これらが直接的に保育士の給与を下げているわけではないと断言できます。

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保育所の新制度について

 次に、去年の4月からスタートした子ども子育て支援新制度についてです。

1兆円弱の予算を当初予定していたのに、予算の財源確保の目途が立たず、7000億円の予算増で止まってしまったのですが、正直、これで十分です。

認可保育所においては年間約1000万円の運営費増となり、今までトントンで経営していたところに、急に1000万円プラスになったら、どうしますか?人件費に回しますか?

 いやいや、ほとんど内部留保(貯蓄)に回るだけです。

制度が今後どうなるのかわからないのに、いきなり人件費を増やすような施設はほとんどないでしょう。

これが現実的な選択です。

 

保育施設の幹部の給料はどのくらいなのか

 そして、実はこの業界、給与においては親方総取りの考えがまかり通る業種なのです。

つまり、一部の職員、例えば施設長などの給与が突出していても、何も違和感の無い業種なのです。

運営費の中で配分できるのならば、1年目の園長が年収900万あっても、何の問題もありません。

保育所の監査はそういうところは、『極端に突出していなければ』おとがめがないのです。

それを裏付けているデータは賃金構造基本統計調査にあります。

 少し古いですが、『平成23年職種別第3表 職種・性、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額』のデータを読み解くと、保育士(男)年齢35歳~39歳で経験年数1~4年、年収600万超えです。

 これは世襲の息子か、いきなりきた施設経営者でしょうか。

現場の保育士からしてみれば、ええぇぇぇーーー(;°ロ°) でしょう笑

もちろん、中には献身的な施設長もいますので、一概に否定しているわけではありませんが、そういう仕組みをとれるという意味です。

 

 冒頭で、利権の巣窟と書いたのはここです。認可保育所の施設経営者は余裕でベンツに乗ろうと思えば乗れます。

よっぽど極端な浪費をしなければ、利益が出るのが保育所の経営なのです。

 

保育士は給料が低いキャンペーンの裏

 そして極め付けなことは、「保育士は給与が低い」というイメージ操作です。

これのおかげで、保育士の給与を敢えて高くしなくても、「保育士の給与はこんなものか」と言って、ぶつぶついいながらも納得してしまいます。

 つまり、保育士の給与を改善するという意味が成り立たないのです。改善しなくても、社会的イメージがそうさせているからです。

 保育士は子どもと遊んでいるだけで給料がもらえる仕事、なんて言った人もいました。失礼極まりない発言ですね。

 

特定財源化しても給料は上がらなかった

 そういえば、安心こども基金を活用した制度なのですが、平成25年度に保育士等処遇改善臨時特例事業というのがあり、保育士等の処遇を改善しようという助成金が国からでました。

 しかし、こんなのいくらでも経費に組み込めてしまう制度なので、本当に保育士の処遇改善に繋がったかというと、ほとんどかわらなかったのではないでしょうか。大体はその場しのぎの一時金で済ませ、基本給のアップはほぼありえない制度でしたし。

金にがめつい法人なんかは、助成金がもらえるとわかると、あの手この手で利益に回しますので、内部留保がたまる理由もよくわかります。

 

 

 すみません、夢がないことをずらずら書いてしまって(ーー;)

最後に少し夢があることを書きます。

 

善良な経営者が増えれば、保育士は夢がたくさん詰まった職種

 税金で運営している事業というのは、経営者たちがその気になれば、いくらでも現場の保育士の処遇を改善できるのです。

人件費に回すべき補助金を内部留保や、株主配当などに使ってしまうから、現場の皆さんのところにお金が回ってこないのです。

 

 数十年前、福祉というのは、本当の意味で福祉だったはずです。みんな身銭を切りながら福祉をしていた頃に比べると、今の福祉は全然違うものになってきていると思います。

 世襲なんかはとくにわかりやすく、土地建物財産は引き継ぐけど、先代の福祉理念はほとんど引き継がれないでしょう。企業立だって、利益が出なくなれば撤退するでしょうし、だったらその期間徹底的に儲けようと考えていると思います。それが企業の本質でしょうから。

 

保育士よ立ち上がるなら今だ!

 こんな状況を打破するためには!

現場の保育士がもっと賃金のことを勉強し、施設経営者たちに物申せるようにならないと、絶対に処遇は変わらないと思います。

先ほどもいいましたが、制度をよくしようとがんばっても、経営者が利益主義だったら、何もかわらないんです!

保育所の監査は、法律に則した監査をするだけで、給与については、限度を越えていなければ何も言われないんです!

 

 残業は少ない、ボーナスは安定的に出せる、子どもの未来を見ていくのが楽しい・・・

こんな夢のような職場になりうるべき業種を利益主義にしてしまったのは何なのか。

 

 ずばり、

 

 がんばっても、がんばらなくても、同じ補助金。

 

これに尽きると思います。

 

生産業とは違うんです。。。

子どもの発達は数値化できません。。。

 

だからこそ、福祉の精神にのっとり、現場の保育士等が働きやすい環境、処遇を改善し、

働いている職員が笑いながら仕事ができる => 子どもたちの笑顔が生まれる

これを目指したいですね!

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tasukuism:  こんにちは!保育業界に十数年勤務し、三児の父でもあります。保育士資格を有し、数百人の子どもの成長を見てきた中でそれなりの知識を保有していますが、あくまで男性目線にこだわった情報発信ですので、不快なこともあるかもしれません。経営力についてはコンサルティングできるレベルだと自負しております。もし内容が面白かったら、是非イイネ!等よろしくお願いします☆相互フォロー◎コメントには必ず反応します笑

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  • とっても分かりやすかったです! 保育所はどこも定員は満たせるでしょうし、競争がないと、経営者はなかなか努力する方向には向かわないのかもしれませんねぇ。 もちろん現場の保育士さんたちはお子さんたちと一生懸命向き合ってくださっていますが(~_~;)